ぽっきいブログ

ぽっきいが語るマッチングアプリ体験記

自傷としてのセックスに溺れていく女の話 3

るかと待ち合わせしたのは、ある巨大な駅の改札口。午前11時30分の待ち合わせだった。

 

俺は約束の時間の10分前に着いていたが、ふと思って駅の中のコーヒーショップに入た。るかのような病気の人間は、約束通りにはやってこない。30分どころか、数時間遅れてやってくることもよくある。

 

とりあえず、るかから電話かメッセージが届いたら出ていくことにした。

 

案の定、約束の時間には現れず。しかし30分が過ぎた頃にやっとメッセージが届いた。

 

る:「着きましたよー。どこにいます?」

 

ぽ:「今すぐ行くよ」

 

俺は会計を済ませ、小走りで改札に向かっていくと、るかがこちらに気づき右手を挙げて大きく振っていた。満面の笑顔。

 

る:「ぽっきいは変わらないね~」

 

昔、事務所で働いていた頃と比べると、るかは随分と印象が違う。俺の勘違いだったかなと思うほど明るく、どこか大人びている。29歳だもんな。昔はもっと気だるい雰囲気で、追いつめられたような印象があったんだが。

しかし、ぽっきいとセックスしたいと言って今日待ち合わせたのだ。やはりまともではないと思う。

 

ぽ:「お姉ちゃんはどうしてる?」

 

かつてスタッフだった姉のことを尋ねた。

 

る:「うーん、分からない。ずっと連絡してないから。」

 

居酒屋で喧嘩別れして以来、話したことがないのだろう。結婚式も来なかったくらいだ。まあいい。あのしっかり者の姉のことだ。きっと幸せにしていると思う。電話番号もLINEも知っているが、連絡は避けている。

 

るかは俺の腕に手を回し、言う。

 

る:「もうホテルに行く?それともごはんいこうか?」

 

本気なのかよと思った。当然のことながら、かつてのスタッフのるかとセックスするわけにはいかない。いや、少なくとも、るかとするわけにはいかないのだ。

 

ぽ:「ごはんいこうか。何を食べたい?」

 

る:「この辺りは詳しくないからぽっきいに任せるよ。」

 

俺は、るかとしっかり話をしようと思っていた。なるべく静かで話が出来る店がいい。歩きながら考えて、繁華街の中にある古い喫茶店にした。店内が薄暗く、ナポリタンとアイスコーヒーを頼めるような店だ。

 

お昼時だというのに店は空いていた。サラリーマンがうろつく界隈ではないのでランチタイムに混雑するわけではないのだろう。モケット地の古い椅子に座り、俺はナポリタンとホットコーヒー、るかはサンドイッチとアイスコーヒーを注文した。

 

ぽ:「最近、どうしてるの?仕事とか」

 

る:「あ、言ってなかったね。わたし結婚したんですよ。」

 

ぽ:「ええ?結婚してるの?知らなかったよ。」

 

る:「子供もいるんです。2歳ですよ。今日は保育所です。」

 

ぽ:「それはそれは、おめでとう。うれしいよ。」

 

しかし、新婚であるにもかかわらず俺とセックスしたいと言っているのは、まともじゃないな。

 

ぽ:「じゃあもう昔みたいに派手に遊んだりはしていないんだね。」

 

飲み物と料理が運ばれてきた。るかが店員の女性に笑顔でありがとうと言った。

 

る:「それがね・・・」

 

ぽ:「まさか、不倫してるとか。」

 

る:「不倫はしないですー。でも・・・。」

 

るかが変な表情をした。隠し事を打ち明けるときの困ったような、いたずらっ子のような顔。

 

ぽ:「でも・・・」

 

る:「・・・サークルに入ってるんです。」

 

ぽ:「サークルとは?」

 

だいたい想像がついた。エロの世界にはいろいろなサークルがある。SMごっこサークル、変態ごっこサークル、スワッピングごっこサークル、乱交ごっこサークル、フリーセックスごっこサークル、などね。ソロで活動できる実力も根性もない奴らは必ず群れるのだ。そして自分たちのことを「〇〇界隈」とか「〇〇界」などと嘯く。なんてことはない、性的弱者の男どもが、発達障害精神疾患を持つ女を弄ぶだけの素人の群れでしかない。

 

る:「ぽっきいなら想像ついていると思うけど。」

 

ぽ:「そうだね。昔と同じようなものだろ。」

 

る:「あ、でも昔とは違うんです。危なくないやつです。身元の安全は確保されているんで。」

 

されているわけがないだろう。

金を払っているならまだしも、エロのサークルに属す女の素性など売り飛ばせば金になるんだ。親バレ、旦那バレ、職場バレをちらつかせて言うことを聞かせるのがオチだ。

 

るかの話では、定期的に某高級ホテルで「集い」が開催されるという。男たちがホテル代を負担し、るかを招いてお楽しみをする。男たちも女たちも、お互いに素性は知らない。知っているのは主催者である40代の男だけらしい。

 

る:「だから安全なんです。」

 

安全では全くないけどな。

 

るかはその集いに毎週行くのだと言う。俺からしてみれば、20歳の時と何も変わってない。

自傷行為としてのセックスを、快感だと勘違いしているだけ。

 

じゃあ、なぜ俺とセックスしたいと思ったのか。その点を訊いてみた。

 

る:「ぽっきいのブログを読んでいるんだよ。毎日誰かとセックスするってやつ。たぶんぽっきいの方がセックスがすごいから、一度お願いしたいなって。」

 

うーん。

この人は、俺とどういう関係で、過去にどういう経緯があって、という部分が抜けているんだろうか。

いくら俺が毎日誰かとセックスしているからと言って、元部下に手を出すと思っているのか。

 

ぽ:「旦那さんとはセックスしないのかい。」

 

る:「してますよー。」

 

ぽ:「どうして外食が必要なのかな。」

 

る:「ストレス発散ですよ。」

 

ストレス発散か。嘘ではないのだろう。でも正確には違う。ストレスを感じると自傷行為をしたくなるんだ。それを性欲と勘違いしている。普通の人間はセックスでストレス発散はしない。ストレス発散だとしたら、やっているのはセックスではなく自傷だ。

 

どうしたらいいのだろうか。

結婚している女性なので、治療を勧めるのも出過ぎた真似なのかもしれない。治療でなければ少なくともカウンセリングは必要だとは思う。

 

ぽ:「お父さんはどうしてる?」

 

る:「連絡をしていないので分からないなー。定年退職して家にいるんじゃないかな。」

 

その時、るかのiPhoneが鳴った。

「あれ、保育所からだ。」

 

電話に出て、1時間くらいで行けます、と言っていた。

 

る:「ぽっきい、ごめん、子供が熱があるみたいでお迎えに行かなくちゃ。ホテルは今度でいい?」

 

ぽ:「いいよ。」

 

俺はホッとしていた。ホッとしている場合じゃないんだが。

 

その日はそこで終わった。駅の改札でるかを見送った。るかは手を大きく振って、振り返ると小走りで電車に向かっていった。

 

可愛い女なのにな。どうしたものだろうな。

 

その夜、23時を過ぎた頃。るかからLINEでメッセージが来た。

 

る:「今日はごめんね。」

 

ぽ:「いいよ。子供は大丈夫なのかい。」

 

る:「大丈夫。ぽっきいは、再来週の金曜日の夜、空いてる?」

 

残念ながら、空いていた。

 

る:「じゃあ、少し遅くなるけどセックスしませんか?」

 

まだやる気なのか。

 

とりあえず、金曜日の22時にある高級ホテルのロビーで待ち合わせをすることにした。