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【オリエント工業】日本製ラブドールの深い精神世界と存在意義とは

【この記事はPRを含みますが取材に基づいています】

 

2024年8月、オリエント工業が廃業するという報道がありました。この記事は過去のものとなりつつありますが、ひとつの文化を形成したことをリスペクトし、このまま残すことにします。

 

 

ラブドールという存在を知っているでしょうか。

 

結論から言うと、精巧に人体(主に女性)を模した人形のことです。

 

特に中高年男性に著しく誤解されているため、「ダッチワイフでしょ?」と言われることがあります。変態性欲の寂しい男がひそかに購入し、自宅で楽しむオナニーの道具というイメージでしょう。

 

しかし、かつての「ダッチワイフ(英語ではsex doll)」は、日本でガラパゴス進化を遂げ、世界に類を見ない精神性と高い志を持つに至っています。この記事ではその魅力的な世界観をご紹介します。

そもそもダッチワイフとは何か

ダッチワイフ(オランダの妻)という言葉は実は日本でしか通じません。語源ははっきりとしていませんが、19世紀にオランダ領インドネシアに単身赴任したオランダ人商人が、妻のいない寂しさのあまりに藤や竹で作った抱き枕を使っていたというのが、日本での語源とされています。しかしながら俗説の域を出ません。

 

想像通り、オナニーの補助具としての存在でした。1960年代に日本で流通したダッチワイフは浮き輪のような素材の風船型で、見るからに滑稽な造形でした。

こんなものです(笑)

南極地域観測隊の隊員がオナニーのために持ち込んだダッチワイフ、みたいなセールスコピーで売られた「南極2号」という商品が特に有名でした。

 

この程度のオナニーグッズであれば外国にも存在します。しかし日本人のモノづくりの魂は伊達じゃない。突如ガラパゴス進化を始めていきました。

リアルさを追求していった日本の造形師たち

1977年には日本のオリエント工業が、シリコンを使いはじめ人間の皮膚の質感(柔らかさ、透明感など)を表現するようになりました。また人間の骨格などを研究し、リアルさを追求し始めたのです。最初はダッチワイフでしたが、リアルさが増していくにしたがいラブドールという名前に変化していきました。

 

ここまではよくある「品質の向上」というだけでしかありません。オリエント工業が特殊だったのは、創業当初はこのラブドール、購入時に身体障害者手帳の提示が必要だったということです。

身体に障害を持つ男性が、風俗店を利用したくても断られたり、風俗嬢に身体をジロジロ見られる(あるいは目をそらされる)ことで傷つくことが多いと知った創業者が、優れたドールの制作の必要性を感じたのが創業のきっかけだそうです。

 

オリエント工業の造形技術は、東京芸大大学院卒の造形師などの「芸術と実用の追求」の場になっています。芸術大学を出た作家たちが安定して収入を得られる貴重な就職先になのです。

 

その商品群は目を疑うほどの魅力。

オリエント工業製のすごいところは、シリコンの質が高くシーツを汚さないところ。そして衛生面の管理もしやすく改良を続けているところ。

 

エロ+モノづくりが合体したら、日本は世界のトップであるのは疑いの余地がありません。

銀座のギャラリーでの展覧会や写真集が人気

近年のラブドールは実用品でありながら、その芸術性が注目を浴び、銀座のギャラリーでも展覧会が開かれるほどです。展覧会の来場の8割が女性だというのも驚きます。

 

また、筑摩書房から写真集も出ています。

 

独特の世界観を表現するラブドール

現在の日本では、ラブドールは単なるオナニー補助具ではありません。

障害をお持ちの方、配偶者に先立たれた方、精神疾患などで他人とのコミュニケーションが難しい方などが、「家族」「伴侶」として迎え入れています。

 

変態性欲のオナニーグッズではなくなったのです。

 

名前をつけ、好みの服を買ってきては着せ、髪型を変えたり、一緒に入浴をし、同じベッドで寝るわけです。そしてセックスも。

オリエント工業ではラブドールの納品を「結婚」と呼び、結婚指輪も同梱しています。

 

購入した人が得られるのは性処理だけではなく、それ以上に「癒し」なのです。もはや家族と同じになるため、もし事情があって手放すことになった場合は「里帰り制度」まであります。つまりオリエント工業が引き取るということです。

 

オリエント工業人形供養をするというので、ドールのオーナーたちも安心しているそうです。

 

また定期的なクリーニングやメンテナンスも出来、愛着の強さは増すばかりでしょう。メンテナンスで戻ってきたドールを見ると、どんな愛され方をしているかが一目瞭然だそうです。どれだけ魂を込めて作っているかが分かりますね。

 

 

そして象徴的なのが、ドールの機能面について。

 

オリエント工業ラブドールは、口元を持っても少し口を開くだけ。つまりフェラチオはしてくれません。

これは創業者の強いこだわりがあり、かわいい「わが子たち」を乱暴に扱わないでほしいという強い願い。性処理だけではなく、女性として大切に扱ってほしいという思いの強さが感じられます。

 

ラブドールが女性の代用品である以上、ドールのオーナーは「女性」と誠実に交際する必要があるのです。

 

この精神性が日本のラブドールガラパゴス進化と呼ばれる所以です。(呼ばれてない)

絶妙なポジションを守る制作技術

不気味の谷現象をご存じでしょうか。

 

写実性を追求すると、ある地点から不快・不気味さを感じて拒絶してしまうという現象です。

 

人形が人間に近くなっていくほどに好感も強くなりますが、ある地点から急激に不快感に襲われます。

これはアンドロイドの世界でも課題とされている人間の心理です。

 

オリエント工業はこの不気味の谷の少し手前で留まることを意識しているそうです。リアルと非リアルの同居が不気味の谷に落ちずに済んでいるという、業界の老舗ならではのノウハウです。

 

確かにオリエント工業ラブドールに不気味さを感じにくいです。どこかリアルの女性とは違う造形が含まれているからです。

 

リアルさだけを追求するのはエゴであると、造形師が言っています。

ラブドールは感情を投影するスクリーン

また近年、AIの発達により会話を可能にするかどうかや、女性型アンドロイド(ガイノイド)との協業の可能性も秘めていますが、癒しが求められなければ何の意味もありません。

ファンタジーが存在する余地が大切なのです。

猫を飼うのと似ているかもしれません。人間が勝手に擬人化し感情移入するのが猫の飼育の楽しみ方のひとつ。けっして猫型ロボットを求めているわけではありません。

 

このような深い精神性が、外国製のラブドールとは違うのです。外国製の安いラブドールはシリコンによる油でシーツを汚してしまいます。衛生面もお粗末なものです。しょせん、オナニー補助具の域を出ていません。

 

オリエント工業ラブドールは、程度のいい中古車が買えるほどの値段です。はっきり言って高いです。

でもその品質と精神性に興味を持った方は、オリエント工業のホームページに遊びに行ってみてください。

 

 

オリエント工業のホームページはこちら